廃棄物処理法
2018年02月13日

事務管理とは

不法投棄された廃棄物を処理する責任の法的根拠として、事務管理が注目されています。

破産した最終処分場の対策費用は、誰が負担すべきでしょうか。この点について、福井地方裁判所平成29年9月27日は、破産した廃棄物処理業者に委託した市町村及び排出事業者が、対策費用を、委託重量ベースで按分して負担すべきだと判断しました。排出事業者は、契約書とマニフェストをしっかり運用し、現地確認もしておけば、措置命令の対象とならないので大丈夫、と思っているのではないでしょうか。しかし裁判所は、排出事業者は、廃棄物処理法を守っていても、民法上の責任は免れないと判断したのです。その根拠は「事務管理」です。事務管理とは、義務なく他人の事務の管理をすることです。事務管理によって発生した費用は、本人に請求できます(民法697条、702条)。典型的な事例は、怪我をして意識を失っている人を、通行人が善意で助け、タクシーで病院に運んであげた場合、そのタクシー費用を、後日、本人に請求できるというものです。事務管理費用の請求は、契約責任でも、不法行為責任でもありません。つまり、本人に全く過失がない場合でも請求できるのです。なぜなら、それは「善意で助けてくれた」ということへの、感謝の気持ちとして当然支払うべきものという位置づけだからです。しかし、自治体は、許可権限、立入検査権、行政処分権限もあるのですから、大型不法投棄事件を防止する責任があると思います。行政が、事務管理という法的理論を多用して、排出事業者責任を追及することは、廃棄物処理法の存在意義を失わせる危険があるのではないでしょうか。

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