廃棄物処理法
2018年01月20日

おから事件再考/総合判断説の総合とは何か

最高裁平成11年3月10日決定(おから事件)では、廃棄物該当性について複数の要素を「総合的に勘案して決する」としています。
つまり、各要素を個別に検討して、すべての要素を満たすことを求めるのではなく、各要素を関連付けて総合的に判断するという立場だと、私は考えています。

各要素の重みづけや、各要素がどのように関連するのかについて、最高裁決定もその他の判決も、明確な指針を示していません。環境省の通知(環廃産発第1303299号、平成25年3月29日「行政処分の指針について」)も、各要素を個別に検討しており、これをどう総合的に評価・判断するのか示していません。私は、この総合的判断は、廃棄物処理法の目的、すなわち適正処理、廃棄物の削減、リサイクルの推進という観点から、総合して考えることが必要だと思っています。つまり、一番大事なことは、現場で廃棄物の飛散・放置・環境汚染等が発生していないか、安定的に利用されているかという「現実の利用状況」です。そこで現実の利用状況から、物の性状や取引価値などを個別に抜き出して考え、さらにその個別の要素を総合すると「将来の利用状況の安定性、環境負荷の予防」が達成できると判断できれば、廃棄物に該当しないと判断できるのではないでしょうか。環境省が今回示した「石炭灰製品及び鉄鋼スラグ製品の輸出に係る廃棄物該当性について」の通知では、対象物がJIS規格に適合していることが、物の性状、通常の取扱い形態、取引価値の有無の3要素で繰り返し取り上げられています。これは、各要素を分断するのではなく、各要素が相互に関連していることを示すよい例だと思います。
行政処分の指針通知は、下記をご覧ください。
https://www.env.go.jp/hourei/add/k040.pdf

コラムTOPへ戻る