廃棄物処理法
2021年02月01日

廃棄物の所有権

廃棄物の所有者は誰か。廃棄物が売却された場合、排出者は所有権の侵害を主張できるのか。こんな質問を受けることがあります。

所有権は財産権です。所有者は、所有物を利用、収益及び処分する権利があります(民法第206条)。一方、廃棄物は不要物であり、所有者が利用、収益、売買等の処分をしないものです。
したがって、所有者は、所有物を廃棄する場合には、不要物として所有権を放棄していると考えられます。もちろん、所有者が紛失したり、落としたものは、遺失物であり、所有者の所有権は失われていません。しかし、所有者が不法投棄をしたり、廃棄物処理業者に引渡した場合には、所有権は失われています。
廃棄物処理業者が選別やリサイクルをすることにより財産価値が発生した場合には、その時点で「原始的」に廃棄物処理業者が所有者になります。この「所有権の原始取得」という概念は、私が法律を勉強し始めた時に、なるほど、と思った概念です。
 人類は、最初は野生の動植物を採取して、生計を立てていました。野生の動植物は、誰の所有物でもないですが、最初に採取した人が「原始的」に所有権を取得します。廃棄物も、捨てられた時点で、誰の所有物でもなくなり、その後リサイクルによって新たな所有権が発生する。それは、とてもワイルドで、同時に創造的な行為だと思います。
 しかし、横流し、という言葉になると、知的所有権の侵害、業務上横領などの犯罪的な要素が発生します。また、廃棄物処理法では、マニフェストの虚偽記載に該当する可能性もあります。
 排出者は、捨てた以上、第三者がこれを有効活用することに文句は言えないのですが、不当な横流しを避けるために、優良業者への委託、焼却・破砕等の処理の徹底を求めることが重要です。また処理業者も、横流しというクレームを受けないように、リサイクル基準を明確化することが必要だと思います。

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