平成12年に制定された循環型社会形成推進基本法及び各種リサイクル法などの考え方は、おから事件が示す総合判断説にどのような影響を与えているのでしょうか。
平成16年1月26日水戸地方裁判所判決(廃棄物処理法違反被告事件)では、廃棄物該当性を判断する要素の一つである「取引価値」と「事業者の意思」について、有償売却という形式的な基準ではなく、一連の経済活動の中で価値ないし利益があると判断されているか否かを「実質的・個別的に検討する必要がある」と指摘しています。また、同判例では、木材は、資源有効利用促進法2条2項が定める「建設工事に係る副産物」であること、同法2条13項、同施行令7条に定める有効利用が必要な「指定副産物」であること、建設リサイクル法2条5項、同法施行令1条3項が定める「特定建設資材」であることなどから、再資源化ないし再生利用すべきものであることが指摘されています。この事件では、木くずは廃棄物ではないとされ、これを受け入れていた業者は無許可営業に該当せず、無罪とされました。
なお、この判決を受けて、排出事業者が再審請求をした事件では、同一事案の木くずは廃棄物と認定されています(平成20年4月24日東京高裁判決、平成20年5月19日同高裁判決)。この高裁判決でも、資源の有効利用促進の観点から、「当該物件の再生利用に関する一連の経済活動の中で、各事業者にとって一定の価値があるかどうかという点を、取引価値の判断の一要素として加えることは許されるべきもの」としています。しかし、そのためには「再生利用が製造事業として確立したものであり」「継続して行われていて」「ぞんざいに扱われて不法に投棄等がされる危険性がなく」「廃棄物処理法の規制を及ぼす必要がないという場合」でなければならないとしています。
おから事件再考/水戸木くず事件
2018年1月19日